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トルコリラは買いでは儲からない

キャッチ―なタイトルにしてしまいました。その方が読んで貰えるかなぁと(笑。ですがちょっと誤解を招くといけないのでちゃんと書きます。

普通に買いで入ったらトルコリラ円は儲からない

です。ここで言う『普通』とは数ロットまとめて買って放置するやり方と世間一般でよくやられている『コスト平均法』で定期的に買い増していくやり方、積立方式です。コスト平均法は、購入する量を固定するのではなく、購入する資金を固定するやり方ですね。これは即ち『単価が高い時に少なく購入し、単価が安い時に多く購入する』ことになりますから価格の平均値よりも購入価格の平均値は安くなるやり方です。安定して上下する通貨ペアなら有効なやり方だと思います。

 

トルコリラ(以下『リラ』)はそのスワップポイント(以下『スワポ』)の高さから日本人に人気の通貨です。日本のFX会社ですとほぼリラ円のみなので当記事ではリラ円前提で書いていきます(海外のFX会社でユーロリラってのも一部のマニアには受けてますが)。現在リラ円のスワポは高いFX会社ですと1 Lot当たり120円/日となっています。年換算ですと4万3800円(税引き前)。今週の終値が19.856円(ASK値)ですので、レバレッジ無しの等倍で買ったとしても年率約22%になります。レバレッジを2倍、3倍にすると、年率も約44%、約66%となります。凄いですねぇ。計算としては間違ってません。が、論理的には大間違いです。

 

この計算の前提となっているのは

為替レートもスワポも変動しない

ってことですが、そんな事態はリラ円では決してあり得ません。何故ならトルコは

インフレ率が年20%

とかなり高いからです。2018年のインフレ率が20%で2019年に入ってもインフレ率は下がっていません。インフレとは物の値段に対して貨幣価値が下がること。インフレ率が20%ということは、1年前は5リラで鉛筆が買えたのに今日同じ鉛筆を買おうと思ったら6リラだったっていうこと。貨幣価値は16.67%も下落したことになります。つまり上の計算の隠れた大前提が完全に間違っているのです。

高インフレ通貨のレートは下がる

そしてレートが下がれば

スワポも下がる

のマイナスダブルパンチ!以前の記事でインフレ率を考慮した1年間保有した場合のシミュレーションを行いました。実はあれでもリラに大甘なシミュレーションです。今回の記事ではシミュレーションではなく実際の過去のリラ円の動き、現実のリラ円を見ていきたいと思います。

 

◇過去のリラ円◇

早速過去のリラ円の動きを見ていきます。先ずは視覚的に捉えましょう。2015年5月から2019年4月第一週までの約4年の週足チャートです。並行ライン(赤線)を引いていますがそれが無くてもよく分かりますよね。リラ円は一部の期間を除いて

ずーっとダダ下がり

なんです。しかも結構下がり方がキツい。 

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 視覚的に捉えた後はデータでレート変動を細かく見ていくことにしましょう。過去のトルコと日本のインフレ率、インフレ率から割り出したリラ円の理論的下落率、実際のレートの下落率の推移です。2010年から2018年までの9年間のデータになっています。 

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 2012年~2014年までは奇跡的に実レートが下落しておらず、リラにとってはとてもよい3年間でした。特に2012年は20%も上がってるし。しかしその前の2年間とその後の4年間は実レートの下落率が計算の下落率よりも大きくなっています。しかも2017年を除くと実レートの下落率は計算値を大きく超えています。特に2018年にいたっては実レートが30%を超える下落率で計算値との差が約15%です。

これは2018年の年始に1Lotを等倍で買い建てたとすると資金20万6000円、1年後の2019年の年始時点で含み損が6万2624円となってしまっています。これをスワポで補うには年平均171円/日を超えなければならず、残念ながらみんなのFXですらそんなスワポにはなりません(2018年は平均120円台かと)。つまり2018年は

1Lot当たり毎日約45円の損

高いスワポに惹かれて買ってしまうと逆に損するっていう皮肉な結果となりました。スワポは無担保コール翌日物金利に連動し、無担保コール翌日物金利政策金利に連動します。政策金利はインフレ率のちょい上(+4%前後)に設定されることが多いですが、現在のトルコの政策金利が24%でスワポが120円/日なのでスワポが171円になるには政策金利が34.2%にならないといけません。今のトルコでは絶対無理です。トルコ経済が死んでしまいます。これだけインフレ率から計算される下落率と実レートの下落率に乖離があると

持ち続けるほど損をする通貨

と言わざるを得ません。

 スワポ狙いのリラホルダーの多くがスワポを足しても余りある為替差損を抱え、急落の時に刈られて退場してしまうのはこのためです。

待っていればいつか上がる筈…

本当ですか?インフレ率20%なのに上がるの?しかも現実はそれ以上のペースで下落しているよ?今のままだと上がり目が無いので為替差損で退場するのを待つかもっと大きな損金を覚悟で損切りするかの2択。エルドアンがロシアからS400買うのをやーめたって言うと少し戻しますが21円は遠いなぁ、ましてや22円はエルドアンが仏教に改宗してお坊さんにでもならない限り無理っぽいかも。

インフレ率が一桁台まで下がれば為替の下落はかなり穏やかになりますが、政策金利も下がるのでスワポもかなり低くなります。じゃあ

リラじゃなくてもいいじゃん(笑

痛し痒しですね。

 

◇リラは儲からないの?◇

そんなリラで儲けることはできないのでしょうか?いえいえ、利益を出すことはもちろん可能です。やり方次第なんです。長くなりましたのでこのテーマは別の記事で!